新月の夜
るあさみとナオキの不倫の噂。

「社長が本多さん抱いてたらしいよ。」
「やっぱり不倫…。」
「しかも濃厚だった。社長から一方的に。本多さんが赤ちゃんできちゃうなんて言ってた。」
「赤ちゃんはやばいよ。本多さん、旦那と子供いるでしょ?」
「社長も、そこまでしない。なんてさ、あんな大金持ちのあの瞳で言われたらすぐに堕ちるよ。」
「社長も罪だよ。旦那、子持ちの女性を好きになるなんてさ。」


みんなの暗黙の了解。家か隠れてしか出来ない愛を確かめ合う事。ナオキは悩んでいる。あさみを愛しているからこそ悩む事。


社長室。ナオキは一人、頭を抱えている。ネックレス。悲しく光る、本当は左手の薬指にあるはずの指輪。キスをする。

机の中から写真。家族4人での写真。義人に写してもらった大切な写真。二人の指輪が重ねてある写真。


「ねぇ、指輪だけ撮ろうよ。」
「手も入れる?」
「う〜ん…2枚撮ろ?」
「うん。」

「パパ、ママ。」

悠太はよちよち歩きをして寄ってくる。和也は悠太を抱いて、

「邪魔しちゃだめだよ。にいにいと遊ぼ?」
「うん。」


撮り終わる。

「悠、いいよ。」

ナオキは言う。

「パパぁ。」

ナオキは悠太を抱っこする。ほお擦り。

「きやぁ☆」

和也が羨ましそうに見ている。

「おいで。」
「うん。」


子供達は眠っている。

「ナオキさん、幸せだよ。」


蘇る記憶。ナオキの頬には涙が伝っている。そこへ秘書が。

「社長?」

ナオキは写真を隠す。

「何見てたのですか?泣いて。」
「……。」

机に残っていた二つの指輪の写真。

「これは…。」
「昔の写真だ。結婚を約束した人がいてね。」
「え…。」
「別れたんだ。別れざるを得なかった。親に引き離された。傷付いた彼女は去って行った。いけないのはわかっている。のめり込んではいけない事。父への復讐ではなく、彼女を守れなかった宿命、彼女にそっくりな女性を愛してしまう。いけない事でもしてしまう。子供が欲しい。」
「……。」

秘書は、のめり込んではいけない事、それはあさみとの不倫。そして、あさみとの間に子供が欲しいと確信する。偽りしか言えないナオキ。子供が欲しいのは事実
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