新月の夜

兄は、

「そっか。で、そのリング結構しそうじゃない？」
「…え？」
「だって。シルバーっぽい。」
「…あの坊ちゃん。」
「？」
「育ちが良すぎるのよ。」

弟は、

「お金持ちなの？あの男。」
「…あの男はやめなさい。私も詳しくは知らないけど、どこかの御曹子らしいの。親が質素だから、あまり広い家には住んでないらしい。」
「うそだぁ。見えない…。」
「自由に外出して、束縛されないみたい。」

兄は、

「祐、見たことあるのか？」
「あるよ。姉さんの文化祭で。かまかけたら、びくびくしてた。」

麻友美は、

「かまかけたのね…。悠、警戒してた。」
「姉さんを傷付けるのは許さないから。姉さんが泣いて不安定だった時の話聞いてたらひどい男。」
「…。」
「でも、姉さん好きなんだね。」
「うん。」