足音さえ消えてゆく
 恵美はそのまましばらく黙っていたが、
「ん、まぁまかせなさい」
とにっこり笑った。

「え?いいの?」

「いいのもなにも、もう決めてるんでしょ?」

 いたずらっぽく笑った恵美に、私は、
「うん、そうなんだよね」
と照れ笑いをする。

「じつはちょうど23日から鈴木さんと一緒に、彼の実家に泊まりにいくことになってるのよ。そのときにカナも一緒に行くってことにしてあげるから。どう?名案でしょ、感謝しなさいよ~」

 鈴木というのは、今度恵美が結婚することになっている相手だ。

「まじで!?うれしすぎるー。ありがと!」
思わず恵美に抱きつこうとすると、恵美はそれを押しとどめて、
「ただし!」
と大きな声で言った。

「ひとつだけ条件があるの」

「おみやげ買ってくる、とか?」

「違う違う、それより大切なこと。かならず、そのオバマさん?あれ?」

「小浜さんだって」

「そう、その小浜さんや優斗君とは別の部屋に泊まること!」

 ・・・当たり前だ、と思ったがさからわずに大きくうなずいてみせた。



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