足音さえ消えてゆく
教室の扉を開けると、まるでそれが聞こえなかったかのように菜穂は、うつむいて教科書をパラパラめくっていた。
「おはよ」
いつものように声をかけると、視線をこちらに向けることなく、
「あ、おはよ」
と聞こえないくらいの小さな声で言うのが分かった。
菜穂にはたまにこういう時がある。
ある時は親とケンカした翌日だったり、ある時は月に1度やってくる忌まわしい日だったり。理由はさまざまだが、こういう時の菜穂は異様に暗い。
昔は、バカ言って元気づけようとしていたのだが、最近はそれにも慣れてほうっておくことにしている。
触らぬ神に・・・だ。
椅子に座って、ぼんやりと頬杖をつく。いつもは騒がしい教室がこの時間だけは静かで、不思議な気持ちになる。なんだか、世界にひとりのような気持ち。
「おはよ」
いつものように声をかけると、視線をこちらに向けることなく、
「あ、おはよ」
と聞こえないくらいの小さな声で言うのが分かった。
菜穂にはたまにこういう時がある。
ある時は親とケンカした翌日だったり、ある時は月に1度やってくる忌まわしい日だったり。理由はさまざまだが、こういう時の菜穂は異様に暗い。
昔は、バカ言って元気づけようとしていたのだが、最近はそれにも慣れてほうっておくことにしている。
触らぬ神に・・・だ。
椅子に座って、ぼんやりと頬杖をつく。いつもは騒がしい教室がこの時間だけは静かで、不思議な気持ちになる。なんだか、世界にひとりのような気持ち。