足音さえ消えてゆく
「用事があるならさっさと伝えて出て行けばいいのに」
隣の優斗に耳打ちする。

「おまえ、ほんと分かりやすいな」

 そう言う優斗をにらみつけながらも、胸の中にいやな予感が広がっているのを感じた。これは、なにかが起こるのかも・・・。


「えー」
井上が、いつもよりも大きな声で話し出すと、それまでざわついていた教室内が一瞬シーンと静まりかえった。中には、「あれ、岩崎先生がいる」と今気づいた人もいるようで、コソコソ話している声が聞こえる。


「今日は、私からみなさんにお知らせがあります」

 胸に広がったいやな予感は現実になろうとしている。


「実は、わたくしごとなんですが」

 目線を机の上で組んだ指先に落とす。聞いてられない。


「このたび、岩崎先生と結婚することになりました」

 ゲームオーバー。


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