足音さえ消えてゆく
 茶色いジャケットに紺色のスラックスを履いた小浜は、大学生というよりかは休日の社会人のように見えた。

「あー、よかった。違ったらどうしようかと思ったよ。2日も続けて会うなんて偶然だね」

「そうですね」
そう答えながらも、隣に涼子がいないことに気づく。

「今日はひとりなんだ」
私の戸惑いに気づいたかのように小浜が先に言う。うなずきながら、私は今朝の涼子の言葉を思い出していた。

「涼子さんは先に帰ったんですか?」
そう尋ねる私に、小浜は、
「あぁ・・うん。明日からのテストにそなえて勉強するって昨日言ってたから会えないんだよね」
とにっこり笑った。

「ふぅん」

 今朝、涼子が言った『分からないの』の言葉をまた思い出す。

 涼子が言いたかったことはなんなのだろう・・・。




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