足音さえ消えてゆく
 小浜とともにホームへ降り立つころには、すっかり夜になっていた。昨日は涼子に合わせて一緒に降りたと思っていたが、小浜も同じ駅が最寄りらしい。

 改札口で別れて、私は家へと歩きだす。

 今日は長い1日だったような気がする。早いところ寝てしまいたい。

 
 家につくと、良いにおいが玄関まで漂ってきていた。これは、何かを炒めたような香りだ。

「ただいま」
そう言いながら、お皿に盛り付けている恵美の横にお弁当箱を置く。

「今日、ご飯いらない」

「あら、どうしたの?ダイエット?」
恵美が不思議そうに尋ねる。

「違うけど、今日はむり。早く眠りたい」

 恵美は、しばらく私を見ていたが、
「ん、分かった。お母さんとかにはうまく言っておくから」
と指でOKを作ってにっこりと笑った。

「ありがと」
普段は天然な恵美だが、こういう時は詳しく説明しなくても理解してくれるのはありがたい。



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