足音さえ消えてゆく
 涼子に会ったら、昨日、小浜と会ったことを言ってみようか。
 涼子の話し振りからしてケンカでもしていただろうから、その理由を聞いてみたい。

 いやそれよりも、アオイのFMを聴けなかったことのほうが悔やまれる。昨日の「恋愛相談」の内容を教えてもらわなくては。


 ホームのいつもの場所には、まだ涼子の姿はなかった。

 たいてい涼子の方が早く来ているのに、今日は遅れているのだろうか。

 朝日を浴びながら、ホームの時計と階段付近を交互に眺める。似たような制服を見るたびに「あ」と思うが、どれも違う人だった。


 電車の到着を告げるアナウンスが流れるころには、私は、
「きっと今日から期末テストだから早く行ったのだろう」
と理解することにした。

 電車の扉が開き定位置についた私は、一応交換している携帯のメルアドにメールをしておいた。


『おはようございます。テストがんばってくださいね』



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