足音さえ消えてゆく
 電車に乗り込み、私はふたたび涼子へメールを打つ。

『おはようございます。試験・・・』
そこまで打ってからしばらく考えた後、私はメールを消した。

 もし、もしもこのメールすら返ってこなかったらますます不安になってしまうだろう。大きくため息をつくのと同時に、
「よぉ」
と後ろから声がかかった。

 驚いて振り向くと、優斗がむすっとした顔ですぐ後ろに立っていた。

「なんで、あんたがここにいるのよ。部活は?」

「うるせーやい」
優斗は、ますますぶっちょうずらになって横を向く。

「寝坊したの?」
と尋ねながら、私は優斗が昨日休んでいたことを思い出した。

 混み出した車内で、身体の向きを優斗に向きなおす。

 あいかわらず優斗はそっぽを向いたままだ。


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