足音さえ消えてゆく
「じゃあ・・・家出したってこと?」

「そういうことなんだろうな、たぶん。手紙にもそう書いてあったし」
他人事のように優斗は言った。

「手紙にはなんて書いてあったの?」

 優斗はしばらく天井を仰ぎ見て考え込んだ後、内容について話し出した。

「手紙の中にはさ、『ごめんなさい。いろいろ考えたいことがあって、しばらくひとりになります。学校はお休みします。期末テストの残りは戻ってきたら補講を受ければ大丈夫なはずなので、できれば風邪をひいたことにしてください。冬休みが終わるまでには戻ります。お母さん、ごめんなさい。でも、分かってくれるよね?警察には言わないでね。私は大丈夫ですので』とか、そんなかんじだったかな」

「そんな・・・」

「ま、そんなこんなでおとついはいろいろ人に電話したり、行きそうな場所を探したから寝不足で俺も学校行けなかったわけ。ちなみに今日も朝練なんて行く気になれないし、どっちみち雨だしな」

 そう言う優斗の目は寝不足が続いているのか赤く、疲れているように見えた。



< 77 / 258 >

この作品をシェア

pagetop