足音さえ消えてゆく
 電車を降りてからも、私たちは自然に並んで学校へ歩き出す。

「お母さんは、それでどうするって?」

「アネキの言うとおりにするってさ。探しても見つからないし、きっとよほどの事情があったんだろう、って」

 果たして本当にそれだけなのだろうか?自分の娘が、ましてや高校生の年頃の子が家出したのだ。私なら、そんな簡単にあきらめられないし、逆にあきらめてほしくないものだが・・・。

「涼子さん、何かに悩んでいたの?」

「さぁな、俺にはいつもと変わらないように見えたけどな」

「お父さんは何て言ってるの?」
私がそう尋ねた瞬間のことだった。優斗は、今まで見たこともないような鋭い目を私に向け、
「あいつにはかんけーねえよ!」
と大きな声で怒鳴った。

 
 驚いた私が、思わず立ち止まって目を見開いていると、
「あ・・・いや、ごめん」
と言い、迷うようなそぶりをした後、早足で学校の方へ行ってしまった。

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