足音さえ消えてゆく
 教室に入ると、優斗と菜穂がゲラゲラ笑いながら話していた。
 
私に気づくと菜穂は、
「おはよ、今日は3番目だね」
といつもの笑顔で手を上げた。

 優斗は、同じようにこっちを向いた後、
「カナはノロマだからな」
と笑っている。

「あんたが早くくるから雨ふったんじゃないの?」
荷物を置きながら悪態をつきつつも、私はホッとしていた。


 よかった。いつもの優斗だ。


 席に座って、私は携帯で涼子にメールを打とうと画面を開いた。

 しばらくは画面とそのままにらめっこしていたが、やはり何も浮かばない。何て書いていいのかすら分からない。

 いったい涼子に何があったのだろう。家出するほど追い詰められていたとは信じがたい。今思い返せば、涼子は最後に会った時、確かにすこし変だったような気もする。

 小浜のことだ。

 恋人かどうかも分からない、そう言っていたな・・・。


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