足音さえ消えてゆく
「大声だすなよ、うるせーよ」

 あせった様子で優斗は言った。

 そんなことおかまいなしに私は続ける。

「あのさ、私納得できない。涼子さんがいなくなったんだよ?旅行とかじゃなくって、悩んでいなくなったんだよ。きっとすごくつらいんだよ、悲しいんだよ?それをほうっておくわけ?あんたそれでも血がつながってるの?このまま冬休みが終わるまで待ってるの?」

 きっと、涼子は探してほしいんだ。その時の私はそう信じて言っていた。

「おまえさ」優斗がそう口にしたのは、30秒くらいたってからだった。
「ほんと、うぜーよ」

「はぁ?」

「心配してなわけないだろ。当たり前じゃん、アネキなんだからさ。でも、どうしようもないんだよ。アネキの悩んでいることが分かるから、俺には痛いほど分かってるんだよ!でも、俺にはどうしようもないことなんだよ、俺だって悩んでるんだよ!そんなことも知らねーのにエラそうなこと言ってんなよ!」

「でも・・・」

「うるせー」
そう言いながら優斗は駆けるように階段を降りていった。

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