足音さえ消えてゆく
 さすがの大声に周りにいた生徒が何事かとこっちを見ていたが、私はそんなこともおかまいなしに、教室に戻るとカバンを手に優斗の後を追った。

 下駄箱まで来たが、優斗の姿は見えなかった。

「カナ!」
パタパタと足音がして、菜穂が追いついてくる。

「あぁ、菜穂か・・・」

「ちょっと、どうしたの?なんか優斗、怒鳴ってたみたいだけど」

「ん・・・なんでもないよ。ちょっとケンカしただけ。あいつ、むかつく」

 まだ心配そうな菜穂を置いて、私はカサをさし家路についた。

 

 雨は、まだやまない。




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