治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
ママとロリータちゃん
(一)
グリフェンドール。
名前も知らなかった街は、村と名の付くところに住んでいる私にとっては。
「い、異世界……!」
「面白い表現だねぇ」
和やかなツッコミを入れる彼をよそに、私は辺りを見回した。
街でちらちらと目線を動かしては田舎ものと舐められちまうよっ、とゼルさんは言っていたが。
鳥が海に潜った時のように、その別世界には目移りしかない。
大きな街だった。
人がいっぱいだった。
石造りの街並みは、息が詰まりそうなほどに建物があり。
私の村にあった露店など一つもなく、ガラス張りの店ばかり。
時折聞こえる音楽は、吟遊詩人でもいるのか街の華やかさに一興を添えていた。