治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「ユリウスが楽しいなら、俺も楽しいよ。昼食、近場ですませようか。ブリオッシュっていう甘いパンがここら辺では名物だよ」
「ブリオッシュ、名前だけなら知っています。――って、その前に警察に行かなきゃ。
シブリールさん、どこにあるか知っていますか」
「さあ。さすがに俺も知らないな。ああ、あの人に聞くから近づいてくれ」
彼が指差す方にいるのは貴婦人。
どこかに向かっているのか、一人で歩く婦人に私は近づいた。
すみません、と私が言おうとすれば。
「すみません、そこ行く、お嬢さん」
彼が前に出てきた。
お嬢さん、その呼び方に私だけでなく、呼ばれた貴婦人も驚いているよう。
横顔だけでも明らかに、彼より年上というのに。