治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「ママの手は、冷たかったでしょう」
ピタリと泣き声が止まった。
「あのママの手は優しかったかもしれない、でも温かくはないでしょう。
アリスちゃんが一番分かっているはずだよ。冷たくて悲しい。でも、それは苦痛とは違うんだよ」
私の体を掴む手が緩む。
「悲しいのはその人のことをそれだけ愛していたから。求めるのはその人がいないと分かってしまったから。
ママといつも一緒。嬉しいことかもしれないけど、撫でる手で悲しみを覚えたことがない?」
胸元にある小さな頭が深く沈んだ。
また小さな手が、体を強く掴む。
「死んじゃったら、もう何もかもなくなっちゃうんだよ。その人はもういない。叫んでも、わめいても、泣き続けても。
戻れない、戻らない、思い出となって。残された人たちだけで、置いていった人たちを超えて進むしかない。
悲しいこと。悲しいのは辛いし、泣くのは苦しいから。嫌な感情。でも……でもね、いっぱい泣いて、その人の大切さを永遠に忘れないようにしてあげるんだよ。
忘れたら最後、その人は本当に“亡くなっちゃう”から」