治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


理性が崩れそうだ。
アメあげたくなる大人の気持ちを知ってしまいそうになるが、知ったら人間失格だと私は優しくアリスちゃんから離れた。



「ユーリお姉ちゃん……」


捨てられた猫の眼差しは反則だ。


うっ、とたじろきながらも。


「朝起きたら、お顔洗わなきゃね」


頑張った自分。
また抱きつきそうになる意志を閉じ込め、理性あるお姉さんとしての対応をとった。


最初見た扉の一つに向かう。思った通り、中は洗面所。

バスルームも兼ねているか、擦りガラスの扉もあった。


血が登った頭に冷や水はいいだろうと、早速洗面所も蛇口を捻ろうと。


「アリスもお姉ちゃんと一緒にする」



この子はっ、と涙ぐんだ。


無邪気な顔で私の後ろをついてきた女の子。


とことこ歩いて、洗面所まで来たわけだけど。背伸びしても蛇口に届かないという愛らしさマックスのスチルを忘れてはいなかった。


< 213 / 411 >

この作品をシェア

pagetop