治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
彼がしまった、みたいな顔をする。
気まぐれ、とはいいことを聞いた。
「気まぐれっていつ起こるかも分からないし、私に起こらないという可能性もない。
もうしかしたら、気まぐれに私に魔導書を見せてくれることもあるかもしれないでしょう」
「確率論を崩壊させたな……、まったく、この世全てが偶然で成り立つわけがないんだが」
「私は会いに行きたいです。可能性あるなら」
「君は本当に、他人の扱い方がうまいな。ズルいよ、君からのお願いあっては、俺が――」
彼が近づく。
座る私の背もたれに片手を置いて、頬をなぞられた。
「するべきことは決まっている。言ったよね、繰り返そう。俺の全ては君のモノなんだから。君の中の住人は、君に従い、全力で君を守ろう」