治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
本当にキスされるかと思ったが、艶やかに微笑まれ――さながら。
後で貰うよ。
と、尽くされる代価を求められたようだった。
離れる男の体。
かすかに心拍が上がったのがアリスには聞こえてしまったか、顔を見られてしまう。
「ユーリお姉ちゃん」
「う、うん。アリス、ラグナロク様のお城、だったかな。そこに帰る時、私も連れていってくれる?」
「分かった、ユーリお姉ちゃんだったら招待しても大丈夫っ。お城はね、夜にならなきゃ帰れないの」
「夜に、か。まだ時間はあるね。そうだ、買い物しよう。ご飯、食べたりとかも」
誘うように言えば、何度も頷くアリス。
彼はと言えば、何かを考えているようだった。
ラグナロクの場所に行く、それが突っかかるように神妙な面もちなわけだが。