治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
『あの子が可哀想だと、これから先、幸せな未来を与えたいと俺だって願う』
欠落しなくて良かったと本当に思った彼の言葉。
嫌いだとかつんけつんけな態度をしていても根は――
「私はシブリールさんに言いたいから、言うよ。アリスを助けてくれてありがとうございますって」
改まった感じでありがとうございますを言えば、彼が指で口元あたりに軽く触れていた。
どうそのありがとうに対応していいか分からないといった模様。
その彼をアリスが見る。
どことなく身じろぎした彼だったが。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
完璧に動揺した彼を見てしまった。
優しい人に懐くアリスは、ありがとうと言うなり――シブリールさんを良い人と枠組みするなりに、彼の足に引っ付く。