治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「っ、離れろ。くっつくな」
「今のお兄ちゃん怖くない」
「だからといって、俺に懐くな。言っておくが、君を助けたのは彼女のお願いあってのことだ。
でなければ、今後一生、俺は君を助けたりなんかしない」
シブリールさんは不思議な人だった。
言っていることは素っ気なく冷たい感じなのに。
「癖になったら、困るから、な……」
どうにもその言葉たちに微かな愛情を感じてしまう。
照れ隠し、恥じらいか。
ああ、彼がアリスを嫌うのはきっと。
「お兄ちゃん、好きー」
「言うなっ、薄気味悪い」
“こんなこと”があるからなんだろうな、とその可愛い嫌いな理由に笑ってしまった。