治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
“世界の終焉たる災厄”と“神々の黄昏”
(一)
夜だった。
満月だった。
綺麗な藍色だった。
今の風景がそれ。
緑の芝生の絨毯が、月の光を浴びながら寝ているよう。
無駄なものがなく、ありもしない外の世界。
街の喧騒から離れたここは、神聖めいていた。
――その、藍色の世界に舞う天使。
こっちだよ、と私より少し前をスキップしたりして舞う彼女を見て思うことは一つ。
「二万円をつぎ込んだのに、悔いはないっ」
「おかげで報奨金は全てなくなったけどね」
隣で軽い調子で付け足す彼に、しょうがないじゃないですかと目の前の天使を指差す。
「アリスに合う服は高いのですっ」
「帽子買うだけのはずが、頭のてっぺんからつま先まで揃えちゃって……。何が可愛いんだ、あんなの」