治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
脳が無事ならば、体を治そうという思いと機能が働いてくれる。
現に、今もこうして。
「ああ……余としたことが」
しまった、と呆れたようにラグナロクは言っていた。
珍しい口振りをした魔女に、シブリールが少し怪訝そうな顔をする。
それよりも、未だに傷を繋げない魔女については。
「治さないのか?ただの傷だぞ」
疑問をぶつければ、ラグナロクはやっていると言って。
「そなたの呪いは強力ぞ」
“出来ない理由”を話し始めた。
「確かに、勝負がつくまでは消えないよのぅ。どちらも死んでいないし、回復をすれば余はまだ戦える。
そんな状態では、ふむ、まだ余の力は千の一らしい。わざわざ体を縫合するにも詠唱が必要とは不便な。
やったとしても、無理だろうな。この傷は、ちと大きすぎる。縫合する前に血が流れ出て、傷口から細胞が死んでいく。
いずれは脳が腐るだろう。いやなかなかどうして――」