治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
夜の虹
(一)
血の匂いと甘い匂い。
瞼を開ければ、真っ赤、真っ赤、真っ赤。
お花と地面に垂れている真っ赤なお庭。
「………」
赤い水を花にまくバケツが壊れていた。
「ユリウス、しばらくじっと――ユリウスっ」
壊れたバケツ――体には見えない体に近づく。
足が紙になったみたいに力が入らない。
ふらふらー、ふらふらー。
そんなことをしている内に転んじゃった。
あいててて、とならなかったのは、誰かが私を支えてくれたから。
優しい人だ、見ず知らずの私を助けてくれるなんて優しい。
「ぁ、り……ぅ」
ありがとうとお礼を言った。もっとお礼を言いたいけど、今はあの器に近づきたい。