治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
頬に赤い液体がつく。
倒れたことで、美人さんの目線と同じ位置に私はいる。
上下逆さまに顔を向き合わせていたその状態で、私はなおも手を動かした。
「………」
動かない。
何でかは知らないけど、手がどこかにいってしまったよう。おかしいな、美人さんと違って、私の手首は繋がっているのに。
美人さんの手首が、目の上端で見れた。
そこも治したいのに、何も出来ない。すっごく眠いけど、治すまでは眠っちゃいけない。
「そうか、そなたは優しいな、ユーリ。優しい、ただそれだけで、何も出来ない娘だ。優しいだけで人を救えるとは大きな間違いだが……」
美人さんが目を閉じる。死んじゃったのかと慌てたら、また目をあけたので安心して。
「優しい者を救いたいとは思うな。そなたを救うという行為に、無意味はなさそうだ。――ああ、仕方があるまい。余の敗北だ。負けを認めよう」