治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


* * *


寝覚めというのは誰だって良くない。


頭がボーっとし、うつらうつらとする意識覚醒を――


「ラグナ、ロ……っ、!」


私は一瞬で済ませてしまった。


赤い血だまり。
ラグナロク様の顔が間近にあって驚いたというのに、それ以上。


死んでいるかと思い、目いっぱいに涙をためて。


「ふむ、成功か」


一気に、引いた。


「ラグ、ラ、生きて……」


かつぜつが悪い。
混乱により、なんと言ったらいいか分からなかった。


生きていると思わなかった、生きていられると考えられなかった、生き長らえているのが不思議だった。


「あ、……ああ!」


手や顔についた血を見て、錯乱する。


頭を振って、頭を抱えて、頭をうつむかして。


やっぱり私は涙した。


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