治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「旅に、必要なものを、一通り、集めた。すぐに、でも、行けるんだよ」
「街の奴らに笑われないようにお洒落な服も準備しといたからねっ」
ばん、とゼルさんに背中を叩かれた。
唖然とする気持ちが痛いという気持ちを消してくれる。むしろ、その背中を叩かれたことが。
「行っておいでユーリちゃん。可愛くて若いんだから、色んなの見てくんだよっ」
戸惑う私を進めと押してくれるようだった。
――全部、分かった。
昨日、村長にあの話しを聞かれたんだろう。
でなきゃ、いきなりこんな、私の願いを叶えるような、こんなことを。
「みんな……。でも、私がいなくなったらみんなが、病気したときとか」
「心配、しなくて、いいんだ。隣街から、医者くるよう、頼んであっから。
ユーリちゃんより、役立たんかも、しれんが。ユーリちゃんに、いつまでも、わしらの面倒、みてもらう、わけにもいかにゃあねぇ」