治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
婚前旅行ではなく、離婚旅行
(一)
「地図に、コンパス。食料、それに衣服。あー、本当に揃っているねぇ」
森の中。
村人たちとお別れをした後の私たちは、渡された皮袋の中身を確認していた。
感動的なことは破綻したが、村人みんなが私のために用意してくれたことだ。
婚前旅行とかの勘違いはあっても、村から離れ、彼と離れられる手がかりは欲しいし。
何よりも、これから広い世界が見られるんだ。
その準備となる皮袋の中だが。
「替えの服も、やっぱり“これ”なんですね……」
広げてみた服――というよりも、ドレス。
お世辞でいっても、ふりふりのドレスめいたワンピース。
フリルだの、コサージュが目立っている。
ゼルさん言ったとおりにお洒落で可愛いが。
「本当に、巷ではこんなのが流行っているんですか」
ゴシック系の服はいかがなものだろう。