治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「俺は気に入っているよ。なんだか、ユリウスとお揃いみたいで」
お揃いとは、彼がひらひらを着ているわけじゃなくて系統についてだろう。
黒い、燕尾服。
タキシードではなく、こちらの正装を選ぶとは……ゼルさん、何の影響を受けたのか。
「俺は似合う?」
腕を軽くあげて、どう?と聞く彼。
そう何気ない感じで聞くのは卑怯だと思った。
似合う。心の中だからこそ言えること。
長身で細身。藍色の髪が黒と同系色だからよくマッチしている。
顔だけなら爽やかなのだから、普通に立っているだけで通りがかりの人からお金が貰えそうだ。
「……、まあまあです」
「顔に惚れ直したと書いてあるよ」
「微塵たりとも思ってないことを言わないで下さい」
「じゃあ、俺とお揃いで嬉しいと書いてある」
「書き直した内容も思っていませんからね」