治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
お嬢様と執事みたいな妙な組み合わせだとは思う。
お嬢様など柄じゃないから、ささっと着替えたいわけだけど。
「酷いなぁ、ちょっとは歓喜しながら、俺の胸に飛び込んでくればいいのに。せっかくのハネムーンなんだからさ」
「まだ言いますか。この旅行……じゃない、旅の目的はあなたと離れるためにすることです」
「はいはい。恥ずかしがりやなユリウスのために、“そういうこと”にしとくよ」
「そういうことに絶対になりますからね」
まったくと、白いヒラヒラワンピースを戻そうとして。
「あれ……、っ!」
皮袋の奥底にあるものを見つけてしまった。
私が中身を凝視したのを気付いたか、シブリールさんが手を出してくる。
中のものを取り出し、ひぃふぅみぃよぉ、と村のおじいちゃん受け売りの数え方をして。
「凄いねぇ。十万円以上もあるよ」
和やかに、出したお金の金額を言う彼からお札を奪った。
「返してきますっ!」
「まったまった。村のみんなの善意を返しちゃいけないよ」