治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


「獣は火に近づかないと本で読みました。焚き火すれば大丈夫です」


「まあ、確かに獣はこないし。ここいらに、猛獣なんかいないけど」


歯切れ悪そうな感じでまた止めたほうがいいと言われてしまった。


彼がそこまで言うならば、何かあるのだろう。


森で野宿。思い当たる節を頭で考えて。


「寒さについてですか?大丈夫ですよ、今は冬じゃないし、焚き火あるからあったかいです」


「夜はいつでも寒いよ。体が凍えたらどうするん、だ…………、いや」


ふと、彼が口を閉じる。


ぶつぶつと脳内で計算をしているような。


「夜、凍えて、寒い。あったかくと寄り添って、二人、一緒に……」


小さな声が聞こえる。
聞き取りづらく、何を言っているのか聞いてみれば。


「野宿しようか、ユリウス。うん、野宿はいいよ」


意見を180度変えた人がいた。


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