治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
「四時間もかけていられないでしょう。夜が来て寒いんだ。凍えてしまう。旅の一日目早々に風邪を引くだなんて縁起でもない。
あったまり、明日の体力のためにもう寝よう。まだ先は長いのだから」
しごくまっとうな意見には反論できない。
確かに、先は見えないほど遠くに。
今から体調を崩していては情けないどころの話じゃない。
大木の幹に座って、よりかかる彼。
ゆらゆらと赤い炎が彼の姿をオレンジに染めている。
焦げた匂い。ちりちりした赤い玉が上に跳ねる。
焚き火だ、まさしく。
焚き火に手を伸ばせば、温かい。
「ユリウス、こっちの方が温かいよ」
誘う声がやけに甘い。
すぐ後ろを見れば、毛布を用意していた彼。
二枚の毛布。私用、彼用と準備してくれた。
「……、なんで、一人で毛布独占してんですか」
その二枚を贅沢にも独り占めする人を冷めた目で見る。