治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん


唯一の自慢を言えば、森の中にあるくせに日当たりがいい部屋の中。


明るくて、ネコが来たらひなたぼっこしながらおねむになるぐらい温かい部屋。


幸せな毎日、穏やかだ。


「ユーリちゃん、また野菜おくから、くいんなよぅ」


「はい、ありがとうございます」


薬を探している時に優しい声をかけられる。


温かい家に優しい人。文句ない毎日を送れている自分は幸せだ。


「あ、れ……」


薬が見当たらないと少し困った声をあげれば。


「どこ見ているの、ユリウス。シーナさんの痛み止めは隣の棚だよ」


耳元で声がした。

息を吹きかけられるぐらいのそんな距離。


鳥肌たって、顔を声した方に向ければ。


「忘れんぼうだなぁ、昨日整理して移動させたじゃないか。まあ、ユリウスのそんな天然なところも俺は大好きだけど」


真横にいる藍色の目をした男。


近いから離れて下さいと言おうにも。


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