治癒術師さんに取り憑いた魔導師さん
夜は暗い。
けど、夜なりの明るさも存在する。
満月に近い月が木々を照らして、私たちを見ているよう。
ここからずっと離れた場所にあるというのに、世界を照らす光を持つものは彼の横顔とよく似ていた。
消えてしまいそうな、淡い光。
藍色の髪は、月で照らされた闇色だった。
歩きながらそんな横顔を見ていれば、彼がこちらに気づく。
「疲れた?」
「あ、いえ」
実を言えば、疲れている。
盗賊に狙われたということあってか、今はかなりまいっていた。
半日以上歩いた体のはずなのに、今歩くとなると軽く息があがってしまうが。
「大丈夫です。早く近くの街――グリフェンドールにいって、彼らを捕まえてもらいましょう。四日もいたら、死んでしまいます」
足を止めてはいけないとまた進む。