secret garden
ぼくがレッスンを受けている間、ママは近くの喫茶店で待っている。先生に悪いからと言ってすぐに出て行く。
ぼくのレッスンが終わるまでカプチーノをすすっている。
喫茶店のマスターはナマズみたいな髭を生やしていていつも静かににこにこしてる中年の優男だ。
ぼくはレッスンが終わるとゆっくり喫茶店に向かう。そのほうがママがのんびりできることを知っているからだ。それに、ぼくも少し、息抜きが必要だから。
いつも、ぼくが扉を開くのとほぼ同時にマスターがカウンターにミルクを置く。夏はよく冷えたミルク。冬はハチミツがたっぷり入ったホットミルク。
ぼくは置かれたミルクを飲み干すと、ママに新しい楽譜を見せた。
今日から練習曲が変わった。ぼくには少し難しい曲。ママはじっと楽譜を見つめている。
「懐かしいわねぇ」
ママが小さくつぶやいた。
「ママもね、同じくらいの年の時にこの曲を弾いたわ。コンクールの課題曲だったの」
ママが音符を追いかける。いつものママじゃないみたいだ。
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