神への挑戦
序章　始まりは一本の電話
ここは都心に近い場所にある、雑居ビルの個人事務所。

その事務所に、二人の人間が暇を持て余していた。

かなり使い込んでいる様な、年代物のソファーに横になりながら、雑誌に目を通している男と、簡易デスクでコーヒーを飲みながらノートパソコンを弄っている男。

二人ともまだ日が昇っている時間なのに、仕事をしている様な様子はなく、明らかに時間を浪費していた。

そして、デスクに座っている男が、一つ大きなため息をつくと、ソファーで寝転んで雑誌に目を通している男に話しかける。

「エース…何か仕事はないのか？」

エースと呼ばれた男は、雑誌から目を放すことなく、返事を返す。

「見ての通りないよ？このご時世だからねぇ…まぁ仕方ない」

エースのあっけらかんとした態度に、業を煮やしたのか、パソコンを弄っていた男が、エースの反対側にあるソファーに乱暴に腰を下ろすと、エースに食いかかる。

「ないよ？じゃねぇだろうが。今月何も仕事してねぇんだぞ！こんなんで今月の給料払えるのか社長さんよぉ？」

男がかなりご立腹な様子で、エースに話しかけると、流石に悪いと思ったのか、寝ころんだ体制を治し、座りなおすと笑顔で男に話す。

「給料は任せとけってジャック、こいつで稼いでくるから」

エースはそう言うと、見ていた雑誌をジャックに見せた。

「……ナメてんのか？一体お前のパチンコでどれだけ俺が迷惑したと思ってんだよ！」

ジャックが怒るのも無理はない。エースが見せた雑誌は、今月号のパチンコ情報誌であり、今月の新台で給料を稼ぐと言いだしたのだから…。

「今月は勝てそうな気がするんだよ。メイちゃんが俺を呼んでいるんだ…」

メイちゃんとは、この雑誌に載っている、新台のメインキャラクターの一人。よくある、このキャラが出たら、大当たり確定の演出のキャラで、エースはこのキャラが呼んでいると、戯言を言っているのだ。


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