神への挑戦
そしてこの時、ジャックの頭の中には一つの疑惑が浮かんだ。

「なぁエース…もしかして、そっちの筋って…」

ジャックの疑惑…それはこのビルが、言ってしまえばヤクザの穴場スポットだと思っていたのだが、それは違うんではないかという考えだ。

状況を整理しよう。このビルに入って、妙に視線を感じていた事と、目の前に居る摩訶不思議な話し方をする男性が居る事…。

要するにだ。

「うん?そりゃ勿論、男性が好きな男性の穴場スポットだよ。見れば解るだろう?」

確かにこの状況を見ればすぐに解る。だが、ビルに入った直後は誰も気づかないだろうと、ジャックは思っていた。

そしてジャックは一つの結論を出す。

「帰ろう。今すぐに帰ろう…」

エースが何を思ってこの場所に来たのかは解らないが、ジャックはすぐにでもこの場所から離れたい衝動にかられていた。何故だか身の危険を感じているのだ…。

「せっかく来たのに、もう帰るの?私と一緒に飲みましょうよ…白人のぼくちゃん?」

ジャックの様な反応をする人間に慣れているのか、カズミはジャックの腕をそこそこ逞しい腕でガッシリと掴むと、店内に引きづり込んだ。

「やめろぉ!帰してくれぇ」

ジャックも抵抗を試みてはいるようだが、いかんせん相手が悪いようだ。抵抗も空しく、ジャックはカズミの腕力の前では赤子同然だった。

そしてその様子を見ていたエースは、ジャックの新鮮な反応を楽しんでいるのか、店のドアを閉めると、カズミとジャックの後に続いて、店の中に入って行った。
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