神への挑戦
確かに、あの時のタケシの行動には、不自然な点が見受けられた。LAN闘祭で、怪我を負ったタケシは、個室の病室に入院していたはずだ。当然、外出などは禁止されていたはずだし、ハヤトの知る限り、病室を訪れたのは、ミカだけなのだが…。

「それは多分、あの時タケシの父親が、ジャッジタウンを訪れていたのが原因だと思うよ」

「なんだと…黒幕であるタケシの父親が、ジャッジタウンに居たのか?」

ミツハルの口から出た言葉は、衝撃の事実だった。

ハヤトは、その言葉を聞いても納得がいかないようで、再度ミツハルに聞き直す。

「それは、いくらなんでも有り得ないだろ…ジャッジタウンは、セキュリティーに関して言えば、厳重だ。未成年ならともかく、大人がそう簡単に侵入出来るとは思えないんだが…」

「それが出来るんだよハヤト。タケシの父親は、正規の手段でジャッジタウンを訪れたのさ。その証拠に、関所の記録にもちゃんと残っていたから…『視察』という名目でね」

ミツハルは、その事実を知っていた。銀次の父親でもある、前田さんがジャッジタウンに来たのも、タケシの父親のジャッジタウン訪問が一つの要因でもあったからだ。

ミツハルは、ハヤトに隠していたあの日の真実を語りだした。

「あの日、LAN闘祭が終結した後、タケシの父親が、ジャッジタウンを訪れたんだよ。僕や銀次さんは、直接関わってないんだけど、前田さんはタケシの父親と会談をしたんだ…そして、その会談が終わった後、前田さんは中学生地区を視察しに行ったという訳さ」

「視察か…その、中学生地区の視察の途中で、タケシの病室に顔を出したという訳か。…でもおかしいな、俺が聞いた話では、ミカちゃん以外は、30代ぐらいの女性しか見舞いに来てないって言ってたんだが」

ハヤトは、タケシが行方不明になった事実を聞いてすぐに、病院の受付の人に確認を取っていた。そして、タケシの病室を訪れた人の帳簿を見せてもらっていたのだが、ミカとその女性の二人だけだというのをちゃんと確認していたのだ。

ハヤトは、昔の記憶を辿りながら、ミツハルに聞いた。

「その人は多分、タケシの父親の秘書だよ。タケシとも面識はあるだろうし、その人が説明したんだろうね」
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