神への挑戦
エースが侵入しようとしたのは、裏手にある勝手口で、当然の様に鍵がかかっていた。だがエースは慣れた手つきでピッキングを開始し、ものの30秒足らずでドアの施錠を開き、中に潜入する。

そのドアを開くと、通用口へと繋がっている様で、狭い通路が視界に飛び込んでくる。エースは、ドアを閉めると、念のために鍵を閉め、足音を気にせず中に入って行った。

理由としては、ピッキングの時にそれなりの物音を出していたので、もし中に人が居れば間違いなく気付かれていると思ったのと、前もって大きい音でノックとしていたので、中に人の気配がない事には気付いていたのだ。

狭い通用口を通り、突きあたりにあるドアを開くとかなり開けた場所に到着する。

その場所は、一か所だけ光が差し込む特殊な作りをしている倉庫で、それなりに広い面積を保有している。この空間を見る限りでは、この倉庫の大部分はこの空間の為の施設と考えて良いだろう…。

エースは倉庫内の機材などを見回りながら様子を探り始めた。置かれている機材はどれも見た事もない様な代物で、エースは注意深くあたりを見回した。

ハヤトの話しでは、工場のほとんどは大麻の栽培や、それらを加工する為の機材だけだったと言う話しを聞いていたので、どうやらエースの思惑は当たっていたようだ。

エースがこの工場に注目した理由。それは、この工場だけが異質な立地条件にあったのが理由だった…。

エースの調べで解った事は、他の麻薬工場は別に警察に押収されても良いんだと言わんばかりに、警察の眼に届きやすい場所にある事だった。

普通なら、この様な場所で大麻を栽培した方が、警察に捕まるリスクは低く済むのに、大胆にも町中の工場で栽培を開始していたのだ。そしてこの場所には、麻薬を栽培していた痕跡は何もない…。

「どうにも怪しいねぇ…一体この場所で、何をしていたんだか」

エースは、倉庫の片隅に乱雑に置いてあるソファーに座ると、多少くつろぎながらそう呟いた。
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