神への挑戦

「ぼちぼちな。ヒサジは元気なさそうだな」

「まぁな。ちょっと疲れが残っているからよ…」

ヒサジは、顔は笑っているものの、少し疲れた様子でそう答える。

「それは仕方ないだろ東の新人王さん。今日勝てば、本物の新人王になれるんだろ？」

「あぁ…勝てばな」

ハヤトとヒサジが話し込んでいる中、サヨとマリコはハヤト達の様子など眼中になく、二人の世界で話あっていた。

「あれ？自信ねぇの？」

ハヤトはヒサジの様子を見て、くだけた口調で問いかける。

「俺が、負けると思うか？」

ヒサジは、自信がありげな様子で、ハヤトにそう答える。その様子を見たハヤトは、軽く口角を上げ、笑顔を見せる。

「鬼が人間に負けるとこなんか、想像できねぇな。猿や犬をお共にして闘うならわからんけどよ」

ハヤトは、久しぶりにあった親友ヒサジとの再会で、普段はみせないぐらい穏やかな表情をしていた。

時刻は昼の１２時、事件が起こるのはまだ先の話。









その頃エースは、久し振りに銀次と再会を果たしていた。二人は、エースの個人事務所で作戦会議の様なものを行っている。

「『雨』かぁ。また新しい組織の名前が出てきたな…」

「組織と言うか、ミストの部下って感じだと思うけどな。てか、お前が聞いたテロって本当の話なのか？俺はそっちの情報の方が驚きなんだが」

銀次は、事務所にある３人掛けのソファーに深く腰かけると、そう話す。

「詳しい事はわからないけど、睡蓮会宛てに手紙が届いたらしい。睡蓮会に直接そんな手紙なんて出せないと思うから、間接的に知らせたんだと思うけどな」

「間接的にねぇ…睡蓮会の枝なんて、腐るほどあるからな。それにしても、その工場で何を作っていたんだろうな。麻薬じゃなかったんだろ？」

「あぁ。工場内の床は、完全にコンクリートで埋め尽くされていたし、大麻の可能性はまずないな。工場内の機械を見る限りでは、製薬工場って感じだったな」

エースが見た工場内は、お世辞にも綺麗な内装ではなかったが、最近までは掃除が行き届いていた雰囲気はあった。