神への挑戦
記憶は曖昧だが、エースに迷惑をかけた事自体は覚えているらしく、ジャックは素直にエースに謝った。

だが今のジャックは二日酔いと脱水症状のピークだ。それと同時に適度に襲ってくる車の揺れが、ジャックの胃袋を定期的に刺激しており、気分は最悪といったところだろう。

ジャックの声には覇気がまったくなかった。

「別に謝るほど変な事はしてないよ。ただ、そんなに気分が悪いなら、ホテルで休んでても良かったと思ってね。今日は、俺一人でも良かったといえば良かったし…」

「いや…俺も働かないとな。二日酔いで仕事が出来ないなんて、良い訳にもならんだろう」

ジャックの今の状態を見て、エースなりの配慮だったんだろうが、ジャックは仕事を続行する気のようで、大量に買い込んだお茶とコーヒー、それにミント系のガムを作業のごとく、食している。

エースはそんな相棒を軽く不憫な目で見つめていた。

「…酒ってやっぱ怖いねぇ。不景気だからかなぁ」

「それは絶対に関係ない…」





エースの運転する車は、温泉街を抜け、綺麗に舗装されているはいるが、民家などがない盆地を走っていた。自然情緒が色濃く残っている風景が車内から見える中、突然見慣れない風景が目の前に広がってきた。

まず最初に気になったのは、大きい門。通れる通路は、エースが走っているこの車道のみで、歩行者の通路は無い道路の先に見えるこの門は、来れる者が限定されている場所なのだと、ジャックは気づいた。

傍目から見れば、大きな刑務所の様な場所だ。外からの侵入を拒み、中からの脱出も出来ない刑務所と似た作りに見える。

「ここは一体…どんな場所なんだ?」
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