神への挑戦
ハヤトは口に出しながら、今回の試合の解説をしていた。マリコもサヨもハヤトの言葉に耳を傾けている。というか、近くに居る観客のほとんどが耳を傾けていた…。

「本当の狙いは、自分の距離を相手に感じさせないためにあったんだ。全ては最後のパンチを効果的に打ち込む為の布石…完璧なシナリオだな」

レフェリーは途中までカウントを数えていたが、途中で腕を交差させる。そして、リングサイドからは、重量のある高い音が響き渡った…。

「やったーっ！ヒサジ君のカッチィーっ！」

隣で試合を見ていたマリコは、サヨの腕をブンブンふり回しながら、体全体を使って喜んでいた。サヨもそんなマリコの姿を見て小さい笑顔を見せながら、歓声を上げる。

（でもこれは、相手のパンチを捌けるだけの技術と、大砲にも動じない強靭な精神がないと成せない技だ…恐れ入るぜまったく）

無事に試合が終わったのと、隣で喜んでいる二人の様子を見たハヤトは、少し安堵した表情を見せた…。







その頃エースと銀次は、車をパーキングに止めると、車から降りてきた。

二人が向かった場所は、ホワイトとブラックが根城にしているライブハウスだった。事前のタレこみ情報で、あの二人がこのライブハウスに最近顔を出している事を聞いていたのだ…。

「そう言えば、ハヤトは今何してるんだ？」

ライブハウスがある場所に向かう最中、銀次は前を歩いているエースに問いかけていた。

「ハヤトかい？ハヤトは彼女と一緒に、ボクシングを身に行くって言ってたよ。知り合いが試合に出るんだってさ…」

「あぁっ！今日は、ヒサジの試合があるんだったか！チクショウ、俺も見たかったぜ…」

銀次は大げさなリアクションで頭を押さえると、大きな声でわめき出した。

「それは残念。もう試合も終わっているだろうし、今度の試合まで待つんだな」
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