神への挑戦
エースの中では、その時の決断を悔やむ気持ちはないようだ。どうやら、二人の気持ちの中では温度差がある様だ。

「それは俺もそう思うが、気持の問題だ。俺等は立ち向かう事を諦めたじゃねぇか」

「俺等じゃなくて、俺だよ銀次。俺が銀次の気持ちを無視して止めたんだからね…あの時は、お前まで失う訳にはいかなかった。全ては俺の独断だったんだ…そして俺はその事で謝るつもりはない」

「別に謝れなんて言ってねぇよ。むしろ感謝をしてるぐらいだ…お前が止めてなかったら、俺はショウヘイと同じ目にあってただろうしな」

二人には睡蓮会絡みで、嫌な過去があった。そしてそれは、今も2人を苦しめる結果に繋がっている。

「…そうだろうな。でも今の俺達は昔とは違う…理由はどうあれ、睡蓮会に関わる理由がまた出来た。そして今回はある意味チャンスと言える」

二人は歩きながら会話を交わし、そして目的地であるライブハウスに到着した。

「思想は違えど、目的はおそらく同じである組織。ミストが現れた事によってな…」

エースがこの仕事にこだわる理由。依頼主でもある小宮が一度、この仕事の完了を告げたにも関わらず、こうして仕事を続行しているのはエースの私怨…。

この仕事が、睡蓮会に何かしらの打撃を与えるのではないかというエースの予感によるものだった。

「小難しい事は後で考える事にしよう…取りあえずは、詳しい情報を調べる事が先決だ」

銀次も目的地に着いた事により、頭を仕事モードに切り替えた。時刻は日も暮れかける時間帯の5時…。

二人は、特に注意を払う事なく入口のドアを開け、中に入って行った…。

「随分待ちましたよ。Lucky Sterにようこそ…」

二人を待っていたのは、黒いロングコートを着た坊主頭の男。

ブラックのリーダーである、カツミだった。
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