神への挑戦
それが解っているからこそ、コチラの情報を相手に流す訳にはいかない。

ランもそれが解っているからこそ、拷問の様な目にあっても口を割らなかったのだろう。ジャック達の目的を話せば、今度は銀次やエースの身に何が起きるか解らない。

相手は睡蓮会の関係者。もしくは、睡蓮会の構成員だ…おそらくこの国のトップに居るであろうこの組織は、殺しも何なくやってのける連中だ。

手荒なマネに見えるこれらの行為も、彼等にしてみれば精一杯の譲歩なのだ。自分達の有害になりうると判断された場合、俺等は全滅する事になりかねない。

この世から消される…。

「…何の事を言っているのか解らないな。お前達は誰なんだ?」

言えない。言ったら終わりだ…。

ソファーに座っている初老の男は、ジャックの返事を聞くと、一度ため息を吐き、ランの隣に居る男に視線を送った。男は一度頷くと、座り込んでいるランと向かい合うようにしゃがみ込むと、何かをしだす。

メキっ…

「あぁぅっ…」

先ほどから黙り込んでいたランは、小さくうめき声を上げると、何かに耐える様に身体を折り曲げ、息を殺す様に押し黙る…。

「…てめぇっ」

ジャックは飛びかかりたい気持ちを抑え、眼にはアリアリと怒りの表情を浮かべながら目の前の光景に耐えていた。

さっきのランへの仕打ちを一部始終見ていたジャック。男がした行動は、ランの左の小指の骨を力任せにへし折ったのだ。その証拠に、ランの小指の骨は有り得ない方向に折れ曲がっている…。

「俺等も時間がないんだ。話たくないならそれでも良いが、お前が返事をしぶる度に、仲間が痛い思いをするだけだ…よく考えて返事をしろ。何でお前等は睡蓮会の事を調べている?目的を言え…」

ランは必死に口を閉じ、口を割らない。こんな状況になろうと、ランは仲間の事を考え、話さない事を選んだ…。

だがジャックは…。

「条件がある。それを飲んで貰えるのなら、話してやってもいい…」

「ジャックさんっ!」

覚悟を決め、ソファーに座っている男と向かい合った。
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