神への挑戦
「聞くだけ聞いてやる。条件ってのはなんだ?」

男はソファーに腰深く座っている体制を前傾姿勢にすると、ジャックに問いかける。

「説明するだけなら、俺一人で事は足りるはずだ。だからランを早く、病院に連れてってやってくれ。見た感じ右手も数か所骨に異常がある様に見える…早く治療をしないと手遅れになる」

ジャックが来た時からランは、複数の怪我をしていた。顔は殴られた形跡があるし、右手の指は複雑骨折をしている。おそらく先ほどと同様に、骨を折られたのだろう…。

骨折は早期治療をしないと、一生物の傷になる。それを知っていたジャックは、条件としてそう提示した…。

「ダメだな」

男はそう言うと、スーツの懐からタバコを取り出すと、一本加える。男の取り巻きの一人がその様子を見て、ライターを取り出し火を着けた…。

「お前の考えなんて読めている。大方この男を使ってこの場所を外部の人間に伝え、仲間を呼ぶ気なんだろう?それはさせない」

「違うっ。俺はそんな事考えちゃいねぇ」

ジャックはそう言ったものの、男はジャックの言葉を信用しない。

「何か勘違いしているようだが俺は、条件を聞くだけ聞いただけだ。お前は自分の置かれている状況をまるで理解していないようだな。俺とお前は対等の立場じゃない…お前は馬鹿みたいに俺の言う事に答えれば良いんだよ」

ソファーに座っている男は、ランの傍にいる男を呼ぶと、耳打ちする。何かを言われた男は、壁に立てかけてあった日本刀を取り出すと、ランの目の前に移動する。

「30秒だけ時間をやる。話す気になったら、話し始めてくれ。もし30秒経っても何も言わない時は、この青年の片腕が胴体から離れ離れになると思ってくれ…」

「なっ!?」

屈強な男は鞘から刀身を抜くと、刀を構え出す。ジャックと一緒に来た時、ジャックをバカにしていた男が、その様子を見てランの体をフローリングに押さえつけた。

流石のランも、目の前で振り上げられている日本刀を見ると、恐怖の表情を浮かべている。まぁ無理もないが…。
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