神への挑戦
「スタート」

男はそう言うと、カウントを開始した。

(どうする…ランを病院に運ぶ事が出来れば、ランの身の安全を保障出来たんだが)

「25、24、2…」

(嘘を言うか…駄目だ。下手な嘘が通じる相手じゃない)

「10秒経過」

(正直に話せば、俺達は間違いなく殺される。つうか、この状況を考えると、生かして帰す気はないと思うが)

「17、16、1…」

(クソっ!命が保障されていない状況で、エースや銀次…それにハヤトを危険な目に合わす様な話をする訳にはいかない)

「20秒経過…」

(せめてもう少し時間を稼がないと…この状況をエースが気付いてくれれば)

「5、4、3、2…」

ランの目の前に居る男は、ラスト5秒のカウントを聞くと、刀を振り上げ振り下ろす準備をする。ランはこれから起きるであろう出来事を覚悟したのか、必死に口を噛みしめ、来るであろう痛みを耐える準備をしていた。

(悪いエースっ!俺は…)

「話すっ!話すよ!俺達は…」

「ダメだっ!ジャックさん!!」

目の前のランを見殺しになど出来ない。エースや銀次に悪いとは思ったジャックだったが、自分達の正体や目的を話そうとした時だ…。

部屋の外から物騒な騒音が、外のフロアから聞こえてきた…。

防音がしっかりしてあるこのマンションの一室まで響き渡る怒鳴り声やうめき声。聞き取れはしないものの、外で何かが起きているのは間違いなかった。

その音が聞こえてきて物の数秒で、このリビングのドアが開き、招かれざる客が姿を現した。

「見ぃつけた!待たせたな二人共っ!」

招かれざる客…それは鮮やかな金髪をした男。

「銀次っ!?」

不良界のカリスマ。銀次だった…。
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