神への挑戦
本社ビルを見つめた小宮は、隣に居るエースにそう問いかけた。

「ミストの仕業です。首謀者の仲間から聞いた情報だから、間違いないですよ」

エースは小宮の横で、ビルの入口にバリケードを張り、こちらの様子を窺っている青年達を見つめながら小宮に話す。

「そうか…やはりミストの犯行なのか。ところで奴等はどうやって、こんな人数の仲間を作ったんだ？今回の事件の犯行人数は１０００近い数だ…とても一組織が隠れて募れる人数じゃない」

ミストの謎の一つ。それは、仲間の人数だ…。

この様な事件は、思想犯の仕業がほとんどだ。その場合、同じ志を持った同志じゃないと、こんな大それた事件を起こす事など出来ない。それも生半可な気持ちではこんな事件を起こす事など絶対に出来はしない…。

自分の人生を捨てる覚悟を持った同志じゃないとダメなんだ。はたして、そんな仲間をどうやってミストは、これだけ集めたのか…。

「それなんですがね…彼等恐ろしい事をやってましたよ」

どうやらエースは何かを知っている様だ。

「恐ろしい事？何か知っているのかエース？」

「えぇ……彼等は洗脳されています」

エースの言葉に怪訝な顔をする小宮。考えていた以上に安直なエースの意見に、流石の小宮も否定的な意見をエースにかける。

「洗脳ってお前…こんな大人数を洗脳するの何か、現実的に考えてもあり得ないだろう。
ていうか無理だ。俺がどれだけの思想犯と戦ってきたと思っているんだ？そんな事有り得ない…」

小宮の話は正しい。洗脳とはおもに、個人を否定し自我を無くさせ、違う先入観を擦りつける行為だ。今までの相手の考えを全否定させ、自分の思い通りに操作するのは、かなりの労力と時間を要する作業だ。

しかも言ってしまえば、純粋な相手にしか通用しない手口だ。催眠術と同じ様に、かからない奴は絶対にかからない。

「俺もそう思いますよ。でもミストにはそれが出来るんです…少ない労力で効率良く、それでいて確実にね」

だがエースは小宮の意見を真っ向から否定した。
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