神への挑戦
所変わりハヤトとジンとリュウは、何ものにも妨害される事なく通路を進んでいた。

だが通路を進むにつれ、人々の怒号や何かが壊れる音などが響いてくるあたり、何か事件が起きているのは明かだった。

「…そろそろかな。ハヤト…いつでも打てる準備だけはしといて」

ジンは状況を察し、懐に忍ばしていた拳銃を手に取る。そんなジンの様子を見たリュウも、拳銃を手に取る…。

「マジで言ってるのかそれ。俺はこんなもの使う気はないぞ…」

受け取ったものの拳銃を使う気がないハヤト。普通に考えればハヤトの意見は正論である…。

「うーん…じゃあここで死ぬかもしれないよハヤト。敵さんは殺しを何とも思わない連中なんだからね」

「………」

昔のハヤトは何時死んでもいいと考えていた。それは無知から来る思考で、確固たる決意があっての考えではない。

今では仕事もしているし、大切な人も居るハヤトは、昔のガキの頃とは違う。自分の身に何かが起きれば悲しむ人が間違いなく一人は居ると知っている。

心配や迷惑ばかりかけ、何もしてあげれていない自分をちゃんと理解している。幸せにしてあげたいと思っているのに、行動が伴わない自分を理解している。

（俺はまだ死ねない。それにタケシにもう一発ぐらい喰らわせてやらないと気もすまない…）

ハヤトはズボンの隙間に差し込んでいた拳銃を手に取り、安全レバーを外した。そしてその拳銃を少し眺めた後、前を向きジンに話しかける。

「早く行くぞ。面倒事はさっさと回避して、タケシに会いに行く…」

ハヤトの中では仕事の事など二の次になっていた。ジンの言っていた睡蓮会の実態を自分の眼で確かめるため。そしてその睡蓮会に加担しているらしいタケシを引き戻すためにハヤトは、ジンについてきたのだ。

３人は拳銃を構えながら足早に通路を進んで行った…。
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