神への挑戦
その頃ヒサジは、なぜか事件の渦中でもある椎名製薬工業本社ビルの前に居た。隣にはマリコやサヨの姿はない…。

ハヤトと別れてからかなりの時間が経過したのにも関わらず、ハヤトからは何の連絡もなく、それでいて携帯にも繋がらないこの状況を不審に思ったヒサジが、町中を一人で散策していた経緯で、この場所に来たのだ…。

どうやらヒサジは、何処かにマリコとサヨを置いてこの場に来たのみたいだ…。

「凄い事になってるな…一体何事だ?」

辺りは厳重に警察が囲み込み、一般人が入れるのはビルのかなり外の位置までだ。遠目に見てもタダ事ではないこの事態を見て、妙な胸騒ぎを覚えたヒサジだった…。

(まさかハヤトが関係しているのか?タイミング的には申し分ないが…どうも気になるな)

辺りでヒサジと同じ様に野次馬をしている男に、ヒサジが問いかけた。

「これは何が起きてるんですか?」

声をかけられた男は、ヒサジに視線を送ると、心良く答えてくれた。

「どうやら未成年の青年達が、このビルを占拠して立て籠っているらしいんだ。警察も人質を取られているから手が出せない状況みたいだよ」

「立て篭もり??こんな町中で何考えているんだ?」

「さぁね。でも、この椎名製薬工業の工場とかを襲撃したのも彼等みたいだから、恨みがあっての行動じゃないかな」

(工場を襲撃した後、本社ビルに立て篭もっているのか。無関係…なのか?)

「ありがとう。助かりました…」

ヒサジは男に礼を言うと、人ゴミを外れ人通りが少ない場所に移動した。そして携帯を開き、ディスプレイに出てくるニューズ速報をチェックする。

「昨夜7時過ぎに若者の大軍が椎名製薬工業の工場に襲撃のかけ、工場内を破壊。日本全国で同じ様な事件が起き、そのすぐ後に椎名製薬工業の本社ビルを若者が占拠。人質の人数は把握出来ていないが、50人以上にもなる。この二つの事件は同一犯のグループの可能性が高く、現在も原因究明を急いでおり、逃げた青年達の行方を捜している…か」
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